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【こみゅりんく公開講座報告#2】データベースが語る自院の機能
前回に引き続き、先日開催いたしましたオンライン講座「こみゅりんく」(第6期)の公開講座より、先進的な取り組みをされている藍野病院の地域医療連携センター長:梅本様にご登壇いただいた内容の一部をご報告いたします。今回は、『業務のデータベース化のメリット』に焦点を当て、その具体的な効果と、自院の機能明確化への繋がりについてご紹介します。
藍野病院とは:大阪府最大の「一般病床・精神病床が共存した、認知症も診れる総合病院」。地域医療連携センターでは約300件/月を超える入院相談が発生しており、相談記録業務のデータベース化を図り、手書き・手入力で行っていた96帳票の約70%を自動出力するなど大幅な『業務効率化』を実現。
また、業務のデータベース化によって可能となった『入院依頼(地域のニーズ)・入院依頼結果(院内の問題点)の可視化』からどのように『入院患者獲得までの道筋』を作ったのか?その仕掛け人である梅本センター長の公開講座は必見です。
この記事のポイント
本記事では、公開講座の内容から、業務のデータベース化がもたらす多岐にわたるメリットに焦点を当てます。特に、自院の機能の明確化と、それを踏まえた集患戦略への展開について詳しく解説します。
手作業からデータベース化による劇的な効率化
藍野病院様では、手書き・手入力で行っていた96帳票の約70%を、データベース化により自動出力するなど大幅な業務効率化を実現されましたが、それ以前は、特に他院からの入院依頼の集計に苦労されていました。例えば、近隣の大阪医科大学病院様からの依頼一つをとっても、「大阪医科大学」「大阪医科薬科大学」「医大」など記載が統一されておらず、一件一件手作業で集計し直す必要があったのです。週に70~80件もの入院依頼がある中で、この集計作業の効率化は喫緊の課題でした。
業務をデータベース化したことで、毎朝6時には昨日の入院依頼数が自動で出力されるようになり、以前は早番のスタッフが1~2時間かけて行っていたデータ構築やミスチェックの作業が不要になりました。月曜日の幹部会資料作成のために土曜日に出勤していたスタッフの削減にも繋がり、業務効率は飛躍的に向上しました。
データベース化は集患戦略の第一歩
業務のデータベース化は、単なる業務効率化に留まりません。蓄積されたデータを分析することで、以下の点を明確にすることができます。
・入院目的別件数:地域からどのような医療機能を求められているのかを把握し、ターゲットとなる患者層を明確にできます。
・診療科別依頼件数:どの診療科の入院が多いのか少ないのかを把握し、自院の強み・弱みを理解する指標となります。医師採用の判断材料にもなります。
・依頼元別件数:どの医療機関との連携が多いのかを把握し、効果的な渉外活動に繋げられます。
・連携機関から当院までの日数:入院までのボトルネックとなっているセクションを特定し、改善に繋げることができます。

これらの分析を通じて、藍野病院様では地域包括ケア病棟から障がい者病棟への機能変更という重要な決断を下しました。感染症拡大以降、療養目的の高齢患者様の入院依頼が急増した一方で、地域包括ケア病棟の稼働率は伸び悩んでおり、地域のニーズと当院の機能に乖離が生じていることがデータから明らかになったためです。
データに基づいた連携強化:自院の機能を正しく理解する
データベースを活用することで、連携機関との情報共有もスムーズになります。患者の入院目的や状況、退院後の見込みなどを共有することで、紹介元との連携が強化され、より質の高い医療提供へと繋がります。主要な連携機関とは個々の症例に関する情報を共有することで、入院依頼数の増加と入院までの期間短縮が期待できます。
このように、業務のデータベース化は、依頼元の情報を分析することで自院の強みや課題を明確にし、効果的な渉外戦略を構築するための基盤となります。外来患者さんの流入経路の分析と同様に、入院依頼の分析は、自院の病院機能を正しく理解し、適切な渉外活動を行う上で不可欠です。
最後に
ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。今後とも、地域連携の推進強化に、それぞれの病院の知恵と工夫を共有しながら、邁進してまいりましょう。そしてこの機会にぜひ、オンライン講座「こみゅりんく」への皆様のご参加を心よりお待ちしております。
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