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【こみゅりんく公開講座報告#1】地域のニーズを捉える、地域連携室の役割

先日、病院経営における地域連携の強化と稼働向上に貢献することを目指すオンライン講座「こみゅりんく」(第6期)の公開講座を開催いたしました。今回は、先進的な取り組みをされている藍野病院の地域医療連携センター長:梅本様にご登壇いただいた、公開講座の内容の一部をご報告いたします。

藍野病院とは:大阪府最大の「一般病床・精神病床が共存した、認知症も診れる総合病院」。地域医療連携センターでは約300件/月を超える入院相談が発生しており、相談記録業務のデータベース化を図り、手書き・手入力で行っていた96帳票の約70%を自動出力するなど大幅な『業務効率化』を実現。
また、業務のデータベース化によって可能となった『入院依頼(地域のニーズ)・入院依頼結果(院内の問題点)の可視化』からどのように『入院患者獲得までの道筋』を作ったのか?その仕掛け人である梅本センター長の公開講座は必見です。

この記事のポイント

本公開講座では、地域連携部門が持つ重要な役割と、その具体的な活動について解説しました。特に、入院経路の分析を通じて病院が抱える課題を明確にし、それぞれの病院にとって最適な患者獲得戦略へと繋げることの重要性について講義とディスカッションが行われました。

入院経路分析の重要性

講座内では、参加した各病院における入院経路分析の現状について問題提起を行いました。皆様の病院では、どのような経路からの入院が多いでしょうか?病診連携、病病連携、介護施設からの連携、あるいは外来からの直接入院など、その割合を把握・分析されていますでしょうか?

この入院経路に関するデータは、地域連携部門が日々の業務を通して集積できる貴重な情報です。この情報を分析することで、例えば「当院は病・病連携による入院が多いが、その連携数や状況が当院全体の稼働率を大きく左右し、稼働率向上のボトルネックとなっている」といった課題が見えてくることがあります。そうした場合、安定的な患者数を受け入れるためには、外来患者数もしくは紹介患者の入院依頼数を増やす施策を検討する必要がある、という示唆が得られます。

さらに、梅本様からは、今後の医療業界を取り巻く厳しい状況についても言及がありました。国が2024年12月に公表した、2040年を見据えた「新たな地域医療構想に関する取りまとめ」において、多くの医療資源を必要とする世代の減少に伴う、急性期病院や精神科病床の縮小を強く示唆しています。例えば、現在全国に約11万8千床の精神病床がありますが、厚生労働省はこれを2040年には半減させるという方針を示しています。このように病床数の削減が強く示唆される中で、医療業界は病院存続をかけた熾烈な競争に突入し、「入院患者は待っていても来ない時代」となっています。藍野病院においても、この競争を生き残っていくためには、入院患者を獲得していくことが喫緊の課題であるとの認識が示されました。

このような厳しい外部環境だからこそ、地域連携部門が持つデータの重要性は一層増します。 入院経路の分析を通じて自院の強みや弱みを把握し、地域における役割を明確にすることで、効率的な患者獲得戦略を立てることが可能になります。このように、地域医療連携室は、病院全体の戦略を考える上で非常に重要なデータを提供することができるのです。このデータなしには、今後の変化に対応し、どの病棟や病床機能を強化すべきかの判断を誤ってしまう可能性があります。

地域連携部門の役割:データに基づいた課題解決

入院経路を詳細に把握し、どのような医療機関・クリニック・介護施設等から、どのような理由で入院に至っているのかを分析することで、初めて病院が抱える問題点が明確になります。この重要な役割を担うのが、まさに地域連携部門です。

改めて皆様の病院におかれましても、自院の入院経路を分析し、過去のデータがあれば遡って確認していただくことをお勧めいたします。もし、そのようなデータがない場合は、今からでもデータをしっかりと管理していくことが重要です。日々のデータを蓄積していくことで、将来的に貴重な情報となり、病院運営の改善に役立つはずです。地域連携部門は、まさにこのデータの集積・分析・活用において中心的な役割を担うべきです。講座内では、外来患者数の減少というデータを地域連携部門が提示したことで、医局や管理部が訪問診療に注力するという具体的な事例も紹介されました。

最後に

ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。今後とも、地域連携の推進強化に、それぞれの病院の知恵と工夫を共有しながら、邁進してまいりましょう。そしてこの機会にぜひ、オンライン講座「こみゅりんく」への皆様のご参加を心よりお待ちしております。

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